SPECIAL MAGAZINE #2

TAKU Seiho , TAAR

☆Taku Takahashiをナビゲーターに様々なゲストを迎え、いま最も関心があることを“伝統”“革新”“熱望”“渇望”のキーワードに沿って語るトーク番組『#ASPIRE with EMPORIO ARMANI SOUNDS』。
第2回目のゲストは、若手アーティストとして音楽シーンで国内外から注目を集めるSeihoとTAARの2人が登場! ☆Taku Takahashi曰く「この2人を選んだ理由は、単純に人としてもアーティストとしても好きで、作品もドキっとさせられる。本当に面白いことをやっている2人なので、みなさんも“ASPIRE”されるはず」とのこと。ともに20代半ばと年齢も近く、“ニュージェネレーション”を体現する2人の“#ASPIRE”なモノゴトとは?

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“北大路魯山人 ” by Seiho

「和食」「おもてなし」……日本文化のトータルプロデュースは音楽に通ず

☆Taku「まずはSeihoくんが“伝統”を感じるモノゴトなんだけど……」
Seiho「北大路魯山人(きたおおじろさんじん)ですね。美食家で有名な方なんですが、食事をする際に、その器や食卓に生け花を飾ることで“食”をトータルプロデュースするって考え方を広めたんです」
☆Taku「へえ~、そんな人がいたんだ。全然知らなかった。なんでこの人に興味を持ったの?」
Seiho「自分がアートや音楽に興味を持ち始めたときに、魯山人の個展を観に行ったのがきっかけです。そこでこんなエピソードがあったんです。魯山人は貧しい家庭に生まれて、母親が仕事に行っているときに、食事を魯山人が作り、河原に生えている花を摘んできて飾っていた。“食事をより楽しむ”という視点でのプロデュースが子供の頃から出来ていた。僕も食事のときの音楽をセレクトするの大好きですし(笑)」

☆Taku「なるほどね~。ジョルジオ・アルマーニもそういった考え方は共通しているかもしれない。『GIORGIO ARMANI』を筆頭に『EMPORIO ARMANI』、『ARMANI JEANS』と複数のブランドを展開しているのは、多くの人が知っていると思うけど、彼はホテルもレストランも経営しているんだよね。ファッションは自分がクールだと思うだけじゃダメで、社会的・文化的にフィットしていなくてはいけないって考え方なんだよね」
Seiho「個人的な感想を言うと、魯山人が作る器だけ見ると“居酒屋にありそうな”感じなんですよ(笑) でも、それでいいと思うんです。だって、その器に料理を盛り付けて初めてトータルプロデュースが完成するわけですから」
☆Taku「そういった意味では、俺らの音楽と共通する部分も多いよね。例えば低音をしっかりと作り込んだ楽曲を低音があまり出ないスピーカーで聴かれても、楽曲の良さは伝わらないじゃない? ベストな状態で楽しんでもらいたいもんね」
Seiho「そうなんですよね! だから徐々にセルフプロデュースの思いが強くなってくる。自分でスピーカーを作ってみようとか、自分のクラブを作ろうとか」

美食と音楽制作の共通項に見い出す「トータルプロデュース」の重要性……。 エピソードをもっと知るには番組アーカイブをチェック!

魯山人が制作した器。Seiho曰く、料理を盛り付けて初めて「トータルプロデュース」された作品は完成する。

北大路魯山人(1883-1959)は、美食家であり、陶芸家、篆刻(てんこく)家、書家など様々な顔を持った一流の芸術家であった。と同時に、非常に偏屈で気難しい人としても知られる。漫画「美味しんぼ」の登場人物である海原雄山のモデルといえば想像しやすいだろうか。
近年、“和食”がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、魯山人が提唱していた「器は料理の着物」という考え方や独特の美意識、“おもてなし”の精神は世界で改めて評価されている。
食や芸術での功績を高く評価される魯山人は、その一方で“横暴”ともいえるエピソードを数多く残しており、良くも悪くも“信念のブレない”“自分の美意識を曲げない”人物だったことがわかる。トークでは☆Taku TakahashiやSeihoの音楽制作面での考え方と魯山人の考え方の共通点に触れていたが、“信念のブレない”“自分の美意識を曲げない”という点は、アーティストにとっては譲れない部分。 Seihoが自分の納得のいくスピーカーで、音響を計算したクラブで、その環境にフィットした楽曲を鳴らせば、それは最高の音楽空間になるだろう。魯山人にとってのそれは例えば、自ら腕をふるった会員制料亭「美食倶楽部」や「星岡茶寮」が著名だが、Seihoはこれからどんな音楽の“場”を我々に見せてくれるのだろうか。それが大衆的な定食屋のようなものであろうと、特別な日に利用されるような高級レストランのようなものであろうと、隅々までトータルに意識の行き届いたおいしい作品に出会えるに違いない。

“Gibson ES-335” by TAAR

ギターを通して継承される伝統。それは積み重ねられ、また受け継がれる

☆Taku「TAARが“伝統”を感じるものってなにかな?」
TAAR「いやぁ、言いづらいですよ(笑)。いまの魯山人の話、めちゃくちゃ面白かったですもん。僕はギターなんです。ギブソンの」
Seiho「ギブソンのなに?」
TAAR「335」
Seiho「あー!」
☆Taku「なにその会話、かっこいい…。番号とかでわかっちゃうんだ(笑)」
TAAR「ギターはすごく面白いんですよ。ギターの中には、弾けば弾くほどいい音が出せるものがあるんです。木の水分が徐々に抜けていくことで、響きが良くなる。しかも、ユーズドやヴィンテージのギターになると、前のオーナーの“癖”が音になって現れるんですよ。そういうのって“積み重ね”だと思うんです」

☆Taku「そういうギターって高かったんじゃないの?」
TAAR「めっちゃバイトしましたよ。一生モノだと思っていたんで。バイトをし過ぎて、店長になっちゃいました、高校生なのに(笑)」
☆Taku「音の違いってそんなに顕著に分かるものなんだ? 前のオーナーの癖の出方がバラバラだから、こっちの音の方がいいな~、とか」
TAAR「ありますね。同じモデルで同じ年代のものでも、弾き比べると全然違うので、性格が出てくるんですよね」
☆Taku「面白いね! 双子みたいなもんなのに、性格が違う、みたいな」

一本のギターに込められた想いの蓄積、それは音として鳴る“伝統”……。 エピソードをもっと知るには番組アーカイブをチェック!

TAAR所有のES-335。入手から13年、TAARの弾き癖が着実に出音の変化として“積み重ね”られている。

ギブソン社のES-335は、1958年に発売された世界初のセミアコースティックギター。“ES”は、“エレクトリック・スパニッシュ(・ギター)”の略。通常、エレキギターには、アコースティックギターにあるサウンドホールは存在しないが、セミアコースティックギターにはサウンドホールがある。このサウンドホールがあることで、弾かれた音を反響させて、美しく大きなサウンドを奏でることができる。ES-335のサウンドホールは、一般的なギターのサウンドホールとは形が異なり、ヴァイオリンに見られる“fホール”と呼ばれる形の穴が空けられている。
エレキギターでありながらも、アコースティックギターのような“温かみのあるサウンド”。これが、トークで述べられていた“積み重ね”の音につながっていく。
ギターを通して人から人への受け継がれる伝統とは、音だけではない。性別も年齢も、どんな外見かも分からないが、これまでそのギターを鳴らしたオーナー達の人柄が、音を通しておぼろげながらも見えてくる。なんともロマンチックではないか。

SPECIAL MAGAZINE #2 TAKU

Seiho , TAAR

前半では非常にユニークな視点から“眼から鱗”なトークを繰り広げてくれたSeihoとTAAR。
後半の話題は、“革新”と“熱望”。またまた一筋縄ではいかないSeihoとTAARの独特な“Aspire”は、彼らの個性的な価値観や美学を物語っているかのようです。

“hipstamatic & モジュラーシンセ ”by Seiho

デジタルとアナログ ─利便性と愛着が同居するモノ─

☆Taku「次は“革新”を感じるモノゴトをSeihoくんに挙げてもらいます」
Seiho「ふたつ用意してありまして、ひとつはiPhoneアプリの『hipstamatic』です」
☆Taku「それはどんなアプリなの?」
Seiho「カメラアプリなんですが、要はアナログとデジタルの話で、さっき『EMPORIO ARMANI MAGAZINE』を見せてもらったじゃないですか(番組収録前のエピソード)」
☆Taku「ああ!カタログですって渡されたけど『どこかカタログじゃー!』ってほど、分厚くて、クオリティが高かった」
Seiho「もう“作品”じゃんって(笑)。でも、もしこれをiPadで見たとしたら、この感動はなかったと思うんです」
☆Taku「雑誌のページをめくる感じもいいよねって。でも、だからといって、デジタルがダメってわけじゃないけど」

Seiho「しかも、そのレンズやフィルムが全部、架空の設定というのも面白いんですよ。そこで思うのは、デジタルでもそういうディティールがすごく重要なんじゃないかなって。例えば電子書籍でもページをめくる音を再現できたり……」
TAAR「俺、Seihoくんの曲で、アナログっぽい音が出るところがすごく好き」
Seiho「ありがとう。で、“革新”のもうひとつはモジュラーシンセなんです」
☆Taku「いまはパソコン一台で曲も作れるし、絶対にパソコンの方が便利だと思うけど、なんで?」
Seiho「2~3年前にモジュラーシンセが流行った頃、使っている人は『アナログっぽさが良い』ってよく言っていたんです。でも、そのときは僕も『PCでも再現できるじゃん』って思ってました。でも、最近はモジュラーシンセはデジタル処理できるものも多くなってるんです」
☆Taku「なるほど。アナログの魅力もあるけど、それだけでは出来ないことが技術革新で可能になってきているのね。さっきのアプリにも似ているね」
Seiho「そうなんです。昔はできなかったことが、可能になってきている。でも、最大の理由は“かわいい”からなんです(笑)。機械が俺のために健気に動いている姿にキュンとするんです。ピピピピピという音を一生懸命出しながら、動いているんですよ。そんなことにフェティシズムを感じるんです」

デジタルとアナログ、相反する要素がクリエイションに与える影響は?。 エピソードをもっと知るには番組アーカイブをチェック!

番組収録前に3人が見ていた『EMPORIO ARMANI MAGAZINE』。大判で写真集にも見えるクオリティだが店頭で無料配布されていたという、まさに革新的なカタログ。

Seihoが挙げてくれた“革新”のモノゴトの面白いのは、期せずして“革新”の中に“伝統”も息づいていることだろう。言い換えると、もちろんそれは“デジタル”と“アナログ”となる。カメラアプリである「hipstamatic」にしろ、モジュラーシンセにしろ、デジタライズされた利便性の高さに“革新”を感じながらも、アナログの煩わしさゆえの“愛着”が生まれる。“デジタルだけどアナログ”“アナログだけどデジタル”。一見、矛盾しているかのようなこの技術革新は、時計を例にとるとわかりやすいかもしれない。職人が手作業で作り上げたアナログの時計が現代でも重宝される一方で、Apple Watchのような最新のデジタル時計が話題になる。人間は一方で利便性を求めながらも、温かみのある“愛着”も欲する。デジタルとアナログ。ないしは“伝統”と“革新”は、言ってしまえばコインの裏と表のような関係性なのかもしれない。

“クラブDJ” by TAAR

DJとはなにか? 一生追い求め続ける本当のDJへの道

☆Taku「では、TAARくんがいま“熱望”するモノゴトは?」
TAAR「クラブDJになることですね」
☆Taku「もうやってるでしょ?」
TAAR「面倒くさい話なんですけど……“DJとはなにか?”という話でもあるんですが、個人的には“アートとエンターテインメントの間”だと思ってるんです。そして、それはお客さんの状態も含めてのことなんです。お客さんが踊っていて、初めてクラブDJをしているってことになるんです。僕は常にその状態に憧れてるんです。そういった意味ではまだ僕は“DJ”ではない」
☆Taku「それはなんで?」
TAAR「すごくいいDJのプレイを聴いているときって、感覚の向こう側までぶっ飛ばされるようなことがあるんです。そういった“体験”を僕がDJをするときにお客さんに与えることができているか?ってことなんです」

☆Taku「でも、それはわからないことだよね」
TAAR「だから、一生追っていくものなのかなって思っています」
☆Taku「DJとしてスキルや経験は成熟するかもしれないけど、そういう意味では“DJ”ではないかもしれないってことか。ゴールとまではいかないけど、『今日はちょっと近づいた』ってことはない?」
TAAR「時間間隔がなくなることはあるんです。あと持ち時間どれくらいだっけ?とか」
☆Taku「僕は邪念がないとき。無心になってDJやっているときは、いいとき」
~その後、Seihoも含めて、三者でDJ論を熱く交わす~
TAAR「DJって山登りの先導役みたいなものだと思います。もちろん安心して登頂して戻ってくるというのが基本的なスキル」
☆Taku「でも、その道中がDJによって違う」
TAAR「野に咲く花を紹介する人もいるかもしれないし、景色を見せる人もいるかもしれない」
☆Taku「危ない崖に行く人もいたりね」
TAAR「あとはトークがうまい人だったり……奥が深いですね」

☆Taku、TAAR、Seihoが繰り広げた熱いDJ論の詳細は……? エピソードをもっと知るには番組アーカイブをチェック!

“求道”という表現がピッタリだろう。剣の道では、宮本武蔵。茶道では、千利休などが思い浮かぶだろうか。現代のここに“DJ道”があるとするならば、TAARもまたその険しき道に挑んでいる。古代の哲学者ソクラテスは、「私は無知であることを知っているがゆえに、あなたたちより優れている」という“無知の知”を唱えた。なんという屁理屈! と考えるか、“知らないことを知ることが第一歩”と捉えるか。孔子は15歳で学問を志し、30歳で自立し、40歳で惑わなくなったと言っている。ひとつの道を極めるということは、並大抵のことではない。
上記のトーク部分では、“三者がDJ論を熱く交わす”と省略してしまっているが、番組アーカイブをぜひ聴いて欲しい。DJと一言で言っても、三者三様。目指すべきものもスタイルもまるっきり違うことが分かるはずだ。“Aspire=渇望”。簡単に達成できないものだからこそ面白く、やり甲斐がある。生涯をかけて渇望するものがあるということは、とても幸運なことなのかもしれない。

Seiho

アシッドジャズが鳴りまくっていた大阪の寿司屋の長男にして、2013年、中田ヤスタカらと並びMTV注目のプロデューサー7人に選出され、Sonar Sound Tokyoに国内アーティストとしては初の2年連続出演(2012/2013年)、Mount Kimbie、2 Many DJ’s、Capital Cities、Disclosure、Flying Lotusらの日本ツアー・オープニングまたは共演、そして同郷Avec AvecとのポップデュオSugar’s Campaignでも注目度↑↑↑のビートメイカー兼DJ兼プロデューサー。自身が主催するレーベルDay Tripper Recordsより1stアルバム『Mercury』(2012)、2ndアルバム『Abstraktsex』(2013)をリリース。2014年2月にはブルックリン拠点Obey City(LuckyMe)とのスプリットEP『Shochu Sounds』をPerfect Touchよりリリースしている。また、他アーティストへのプロデュースやリミックス・ワークとして、Les Sins(Toro Y Moi)、YUKI、東京女子流、パスピエ、KLOOZ、Ryan Hemsworthなどを、また、CM音楽やTV番組のサウンド・プロデュースなども多く手掛けている。

TAAR

東京を拠点に活動するDJ/トラックメイカー。常に変化するシーンに対し柔軟にスタイルを変化させながらも一貫したオリジナリテイを追求し、都内はもとより全国各地のダンスフロアを沸かしている。2012年に自主制作で1stアルバム『abstrkt』をリリース。限定生産でのリリースとなったこのアルバムは全国のレコードショップで品切れが続出し即完売。特に国内外のダンスミュージックを専門に扱うレコードショップGAN-BANでは発売2週間でその年に最も売れたアルバムとなる大ヒットとなった。続くリミキシーズアルバム『re:abstrkt』にはJUN (80KIDZ)やFragment、DJ SODEYAMA他、世代やジャンルを超えたリミキサーに迎え話題となった。ファッションショーやエキシビジョンの音楽プロデュースや楽曲提供も行っており、DJ/トラックメイカーの枠に留まらない“次世代の音楽家”として活躍が期待されている。